「露出ではなくブランディング」をどうやって実践したか

一度印象に残ったブランドイメージは半永久的に残りかねない。これがブランディングの難しさでもある。当社ネットワークコミュニケーションズ(NWC)がPR戦略に携わっているプロレド・パートナーズもそうしたブランディングの難しさに直面していた。

プロレド・パートナーズはAIやRPA、ビッグデータなどを活用したコンサルティングを手掛けているコンサルティングファーム。上場準備に入る前からNWCはPRエージェンシーとして共にPR戦略に携わってきた。2018年7月に
東証マザーズへの上場を果たし、さらなる成長に向けて大きな一歩を踏み出したプロレド・パートナーズ創業メンバーの1人、山本卓司取締役に話を聞いた。

ブランディングがしたい

「ちょうど2015年のことです。当社も最初はいろいろなビジネスに手を出していたが徐々に絞り、これなら上場も可能だろう、という自信をつかんだタイミングでした。上場準備を本格的に始めるにあたり、ブランディングをしていく必要がありました。ブランディングは人員拡大に向けた採用活動においても重要ですし」

「PRと言っても扱う商材によって適切な手法は異なりますよね。個人向け、法人向け、有形、無形と、ターゲットや商材の種類によって全く違います。例えば個人向けの有形商材だとリスティング広告のような買ってもらうための広告が適しています。ですが当社のサービスは法人向けの無形商材です。決裁も社長や役員クラスです。となるとWeb上のアフィリエイト広告をクリックしたら手に入るというものではありません。むしろそうした広告は効果が見込めず、ブランディングが重要になってきます」

露出数だけで評価はしない

PRエージェンシーもピンキリでPRのやり方も全く別。多数のメディアにとにかく露出させようと数を重視する企業もあれば、露出の内容にこだわりじっくり取り組む企業もある。

そんな時、NWC岡田直子社長のこの一言が山本氏に決心させた。「露出数だけで評価をしないでほしい」――。「もちろん他の会社も実績もありました。ですが、我々の考え方と合致していたのはNWCだけでした」(山本氏)

「単に露出と言っても望む形がある。自分たちの望むイメージでメディアに出たいわけです。短期的に営業売上を増やしたいのではなく、望む形でのブランディングをしていきたいのです。我々のそうした想いがNWCにはちゃんと伝わった感じでした。それがとても良かったです」

山本氏は続ける。「それに丸投げしたいわけでもありませんでした。社内に担当者を配置して、最終的にはNWCのノウハウを吸収しながら、社内でもある程度できるようになりたいと考えていたんです。大手のPRエージェンシーではそうした望みは受け入れてはくれません。ところがNWCはそのことも了承してくれたんです」

うちの担当が成長したことがうれしい

その結果「うちの担当がすごく成長したことがうれしいですね。NWCの小金丸(彩子マネージャー)さんのおかげです」という。実は本格的にPRの体制を整えるにあたり、プロレド・パートナーズでは広報未経験者を採用したのだ。

「当社はそもそも外部からプロを招き入れるのではなく、皆で手探りでブラッシュアップしていくスタイルです。例えば大手企業で広報をしていた方を招いて、以前の会社ではこうやっていたと言っても、それが我々に合うとは限りません。特にPRについては我々も多少なりやってきて、ブランディングの考えもある程度はありました。そのため、あえて真っさらの素人を広報担当者として起用し、プロのノウハウを持つNWCとタッグを組むという選択をしました」

週に1度行われる定例ミーティングでNWCの小金丸がプロレド・パートナーズのオフィスへ足を運ぶ以外はメールや電話での連絡が中心。ミーティングには佐谷氏、山本氏らも参加して進捗確認や今後の戦略などを議論する。

普段の広報窓口はプロレド・パートナーズの担当者が対応し、小金丸も相談を受けつつ対応する。インハウス広報のように中に入り込んで共に仕事をしていくイメージだ。

「本来は我々が教育すべきところを小金丸さんがやってくれたんです。ビジネスの厳しさやつらさをしっかりと教えてくれました。そこまでしてくれるPRエージェンシーは他にはありません。担当者も入社直後は甘えた所がありましたが、今や仕事で悔し泣きをするくらい強い想いを持って広報の仕事に取り組んでくれています」

上場前なのに「露出を絞った」理由

「例えば我々自身でアピールしたとしても社長、役員クラスお客さんにうなずいてもらうことは難しいです。自分たちで言っても信じてもらえません。ところが業界で評価のある人が当社のことをほめたり、品格のある雑誌などが取り上げたりすると信用してもらえます。本当は顧客の名前を出してPRできればより良いと思いますが、コンサルティングという仕事では、名前を出すことが難しいというのが一般的です」

コンサルティングのような無形でしかもBtoBの高額商材のPRはとにかく難しい。「それができるPRエージェンシーはほぼないと思いますし、NWCのすごいところだと思います」

媒体選択も難しさがある。BtoBだからといって日本経済新聞がベストかというと必ずしもそうではない。どんなにニッチな専門媒体であっても、ターゲットとなる読者がそこにいるのであれば、そこにキチンと露出することが大事だ。

「単に露出数だけを求めるのであれば、流れ作業でパパッとやってくれるPRエージェンシーに依頼する方がコストも安いかもしれませんが、我々もそれを望んでいるわけではないですから」

 そうした考えが効果的であることがはっきり分かったのは上場前である。「この時期は1日でも無駄にすると取り返しがつきません。一方で直前には自然に露出も増えます。一般的なPRエージェンシーだとさらに露出を増やしたがります。出れば出るほど名前が広まりますし、短期的には売上も増すでしょう」

ところがプロレド・パートナーズでは露出を「あえて絞った」。「露出をどのようにするかという点については、かなり前から議論を重ねました」。露出のしかた、表現、そして投資家向けの言葉選び、プロレド・パートナーズを表すキーワード――。一字一句、細かい部分まで含めた見せ方を徹底的に議論した。「キーワード1つで株価が変わりますから当然ですよね」

結果的に上場は成功。ブランディングも「推したい点を推せたことが良かった。逆に望まない露出はできるだけ回避し、あえて取材を受けないこともありました。その選択が良かったですね」という。

なぜ露出「数」と決別できたのか

露出をあえて絞ってブランディングの効果を最大化できた。一見簡単なように見えるが、これは通常のPRエージェンシーには難しい。というのも、広報の仕事を評価する基準はメディアへの露出数くらいしかないからだ。

当然そうした「数」を評価するクライアントとの仕事では露出をあえて絞るというような提案は難しくなる。ところが、プロレド・パートナーズとの評価基準はそうしたものではなかったのだ。

営業系、人事系など、影響を与える対象分野別に露出の実績をプロットして、影響範囲を細かく見てスコア付けをするようにしたのである。例えば人事・採用系の露出だと社員のモチベーションが上がるもの、採用イベントで使えるもの、などさまざま。こうした細かい括りでスコア付けして合計スコアを算出することによって「数」とは別の観点での施策が可能になったというわけだ。

「今後当社は5年後に時価総額10倍、10年後にさらに10倍を目指しています。利益は我々自身が作り出していくものですが、時価総額は利益だけを反映したものではなく、利益とブランド力の掛け算です。そのため、今後は目標達成に向けたブランディング戦略、PR戦略をどのようにしていくかが重要。NWCとはこれからも一緒に考えて行きたいですね」

(完) インタビュー 2018年12月下旬